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Linux JF(Japanese FAQ)Project.
JF は, Linux に関する解説文書・FAQ などを作成・収集・配布するプロジェクトです.

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  Battery Powered Linux Mini-HOWTO
  Manno Mueller, 
  5 May 1997
  佐藤亮一, 
  10 December 1997

  この文書は、Linux システムが消費する電力量を削減するためには設定にどの
  ように手を加えればよいかを述べたものです。これは携帯用コンピューター上
  で Linux を使っているすべての人に有益なものとなるでしょう。電池の取り
  扱い方に関する一般的な注意にも言及しています。卓上機で Linux を使って
  いるなら、この文書に目を通す必要はないでしょう。

  1.  はじめに

  「窮すれぱ通ず」

  1.1.  御質問の前に

  これは「ラップトップに Linux を組み込むにはどうすれぱいいか」を取り扱
  うものではありません。この文書は「ラップトップに組み込み済みの Linux
  を最適化するためにはどうすればいいか」を論じるものです。Linux の組み込
  みについては "Installation-HOWTO" をお読みになるか、配布業者の提供して
  いる手引書を参考にしてください。

  またこの文書は、無停電電源や powerd デーモンの使用法を取り扱うものでも
  ありません(UPS は大きな電池ではありますが)。この分野に関しては UPS-
  HOWTO をお読み下さい。

  1.2.  この文書の守備範囲

  最近携帯用コンピューターを使う人が多くなるにつれ、これに Linux を載せ
  たいという人も増えてきました。

  ラップトップに Linux を載せて使うのには何の困難もないのがふつうです。
  とにかく試してみてください。ほかのOS とは違い、Linux はいにしえのハー
  ドウェアを今でもサポートしています。したがって、時代遅れになった携帯機
  に Linux を載せて新しい用途に活用することもできるのです。

  ラップトップに Linux を組み込む際の助言が必要な方、ラップトップ本体に
  ついて御質問がおありの方は、
   にある Linux
  ラップトップに関するすばらしい Webpage を参考にしてください。有益な情
  報や詳しい助言が満載されています。Linux Laptop のページには、ラップ
  トップ各機種・チップセットごとのハードウェア設定情報が掲載されていま
  す。

  本 HOWTO は、ポータブルに共通する問題の一つである「電力消費」の問題に
  主題を絞り込んでいます。

  これまでのところ、ラップトップ用に最適化した設定の仕方を提供してくれて
  いる配布はないようです。電池を節約してシステムの駆動時間を引き延ばすた
  めに役立つちょっとした工夫を集めてみることにしたのは、この種の情報をど
  こからも手にいれることができなかったからなのです。

  (注: 「私のラップトップではここに書いてある助言はあまり役に立たなかっ
  た」という御叱りの御手紙もちょうだいしています。ここで紹介している方法
  はいずれも確かに効果があるはずです。とはいっても、奇跡を待ち望んではい
  けません。私自身の成果は90分程度だった電池駆動時間を120分以上にまで延
  長できたことです)

  1.3.  本書の読み方

  ラップトップ通の方なら、「一般的情報」の項は飛ばしても差し支えないで
  しょう。通が本当に求めている情報は「一般的システム設定の変更例」の項に
  納められています。Linux の配布業者の方は、是非「Linux 配布業者への御願
  い」の項を御一読下さい。

  1.4.  フィードバック

  読者からの御意見は大歓迎です。宛先は hmueller@kabel.de です。御使いの
  システムでも本文書のヒントは役に立ちましたでしょうか。新しい工夫を発見
  なさいましたか。本書が掲載したアドレスやリンクですでに変更になっている
  ものはありませんでしたでしょうか。

  残念ながら、ラップトップ各機種独自の問題については助言を差し上げる能力
  を持ち合わせわせておりません。ラップトップの教祖を自称するつもりはあり
  ません。たまたま自分自身がラップトップを所有しており、集めた情報をみな
  さんと共有したいと考えているだけなのです。まず最初に Linux Laptop
  webpage を調べてください。おそらくすでにだれかが御使用中の機種に関する
  頁を作成していることでしょう。またメーカーの技術相談も試してみるべきで
  しょう。あるいは、 comp.sys.laptop というニュースグループに質問すると
  いう方法もあります。

  1.5.  免責

  ここで紹介した方法はすべて著者自身が試してみたもので、著者のラップトッ
  プではうまく機能しています(特記した場合は除く)。とはいうものの、ここで
  紹介した方法がシステムに重大な損害を与えたり、損壊させたりする危険性が
  ないという保証を差し上げることはできません。御自分の Linux の設定で試
  してみる前に、大切なファイルのバックアップを取っておくことが重要です。
  もしまずいことが発生しても、著者はデータの損失に対するいかなる責任をも
  負いません。言い換えれば、「訴えないでくださいね」ということです。

  1.6.  著作権

  この文書は HOWTO に対する通常の著作権条項の条件のもとで配布されるもの
  とします。この著作権条項は http://sunsite.unc.edu/mdw/linux.html の
  HOWTO のフォルダの中に収録されています。

  2.  一般的情報

  この章ではラップトップ用電池に関する若干の技術情報、一般的な電力節約法
  を取り扱います。ここで提供する情報は Linux に特化したものではありませ
  ん。ラップトップ通の方ならとっくに御存じのことばかりでしょう。

  2.1.  電池の種別

  現在ポータブルコンピューターが一般的に採用している電池には三つの種類が
  あります。

  NiCd 電池は長年にわたって標準的な技術でした。しかし今日では時代遅れに
  なってしまい、新型のラップトップはこれを採用しなくなっています。NiCd
  電池は重い上に、「メモリー効果」を生じやすいのです。完全に放電していな
  いNiCd 電池を充電すると、電池は充電前の充電度を「メモリー」していて、
  この値を次の充電時にも使い続けてしまうのです。

  メモリー効果が発生する原因は、電池の成分が結晶化することにあります。こ
  の結果、電池の寿命が短くなってしまったり、著しい場合には完全にだめに
  なってしまうのです。これを回避するためには、電池を完全に放電させてか
  ら、再び完全充電するという作業を少なくとも数週間に一度は行う必要があり
  ます。

  (メモリー効果に関する註記: Jomes Youngman さんは下記のようなかなり大胆
  な電池の修理理法」(というべきかどうか)を御存じです。「NiCd 電池にメモ
  リー効果の影響がでてきたら、電池をコンピューターから取り外し30cm ぐら
  いの高さから机か床の上に落としてください(水平に落とすようにしてくださ
  い)。」とのことです。同氏がおっしゃるには、こうすると電池の中にできて
  いるメモリー効果の原因となるヒゲ状の部分が壊れるのだそうです。この方法
  が NiCd 以外の電池にも通用するかどうかは分からないようです)

  カドミウムはたいへんな猛毒です。ですが、販売店に返却なさればカドミウム
  の大部分を再生再利用に供することができます。

  興味がおありかもしれないので、Nicd 電池の定格を掲げておきます。

       セル電圧: 1.2 V
       単位重量当り電力量: 40 Wh/kg
       単位容積当り電力量: 100 Wh/l
       最大電力量: 20 Wh
       充電可能温度: 10 to 35 C (50 to 95 F)
       放電可能温度: -20 to 50 C (-5 to 120 F)
       貯蔵可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F)

  現在低価格ラップトップが多用しているのが NiMh 電池です。この種類の電池
  にはNiCd より小型でメモリ効果の影響が小さいという特徴があります。

  この温度の範囲内でも、室温が高すぎたり低すぎるときには障害が発生するこ
  とがあります。NiMh にはそれほど危険ではなく毒性もない物質が使用されて
  いますが、再生・再利用を完全に行うことはできません(しかし、将来にはこ
  の状況にも変化があるでしょう)。

  NiMh の定格:

       セル電圧: 1.2 V
       単位重量当り電力量: 55 Wh/kg
       単位容積当り電力量: 160 Wh/l
       最大電力量: 35 Wh
       充電可能温度: 10 to 35 C (50 to 95 F)
       放電可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F)
       貯蔵可能温度: 0 to 30 C (30 to 85 F)

  最近の高性能電池はリチウムイオン技術を採用しています。この電池には理論
  上メモリー効果はありません。しかし場合によっては、同様の問題に見舞われ
  ることがあります。リチウムイオン電池には環境に有害な物質は含まれていま
  せん。とはいっても他の電池と同様に、再生・再利用向けに回収する必要があ
  ります。

  LiIon の定格:

  セル電圧: 3.6 V
  単位重量当り電力量: 100 Wh/kg
  単位容積当り電力量: 230 Wh/l
  最大電力量: 60 Wh
  充電可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F)
  放電可能温度: -20 to 60 C (-5 to 140 F)
  貯蔵可能温度: -20 to 60 C (-5 to 140 F)

  電池の箱が同じように見えたとしても、他の種類の電池に取り替えることはで
  きません。御使いの電池の種類とは充電の仕方が違うからです。さらに、大部
  分の製造元が充電回路をラップトップに内蔵しているのも、他の種類に取り替
  えられない理由の一つです。疑問がある場合には、御使いのラップトップで
  もっと新しい種類の電池使えるかどうかを製造元に問い合わせてみてくださ
  い。

  長い間使用していなくても電池は少しづつ自己放電しています。またどんなに
  注意を払っていても、500-1000 回充電すると電池を取り替える必要が生じま
  す。かといって今のところ、交流に接続している間電池なしてラップトップを
  使用することはお奨めできません。電池はピーク電圧に対する保護機能をも果
  たしていることが多いからです。

  メーカーは数ヵ月ごとに電池の形状を変更しているので、数年前のラップトッ
  プ用の予備電池を見つけるのは難しいかもしれません。在庫がなくならない内
  に、予備電池をすぐ手にいれておくべきです。

  2.2.  電力の節約 - わかりやすい方法

  システムの電力消費を削減するもっとも簡単な方法を以下に示します。もっと
  も、そう多くの人がこのやり方を採用しているわけではないので「自明」のも
  のとはいえないかもしれませんが...。

  必要がないときには、ディスプレーのバックライトを暗くするか消してしまう
  かにしましょう。また TFT は DSTN より電力をたくさん消費します。(なぜ安
  いラップトップを買ったのかを説明するときの格好の口実になりますね)

  (David Bateman さんからは「電池オン、ラップトップのディスプレーオフの
  状態にして CRT スクリーンを使えば、電池の持ち時間が30%程度長くなる」と
  の御便りを頂きました。しかしこれはあまり役に立つ工夫ではありませ
  ん。CRT につなぐ電源があるなら、ラップトップ用の電源もあるはずですか
  ら。)

  本当に必要な処理能力はどれだけかということを考えましょう。文書編集を大
  きく越えるような作業を家の外でやっていますか。(まあ私に限って言えば、
  家の外で linux カーネルの構築をしたりはしませんね)電池で駆動している間
  CPU のクロックを遅くしてやっても電力消費を削減できるのです。CPU のク
  ロックを通常速と低速に切り替えることができるラップトップはかなりたくさ
  んあります。

  電池駆動時には外付け機器類(印刷機、CRT モニタ、ZIP ドライブ、携帯カメ
  ラなど)の使用を控えましょう。私のラップトップの場合標準的なインク
  ジェットプリンタを接続すると、電池の持続時間は120分から20分にまで減少
  してしまいました。

  内蔵機器類(ディスケットドライブ、ハードディスク、CD-ROM) の使用を必要
  最小限にとどめましょう。特に CD-ROM にアクセスすると電池の持続時間は著
  しく短くなってしまいます。

  PCMCIA カードも大量の電力を消費します。ですから、不必要なときにまでモ
  デムやネットワークカードを差しっ放しにしないようにしましょう。しかしな
  がらこの点に関しては PCMCIA カードメーカー間の違いも大きいので、購入す
  る前に製品の特徴をよく調べるようにしましょう。(使用していないときにも
  「切」状態にならないようなカードもあるということです。)
  軽いソフトを使いましょう。肥大したマルチメディアソフトは軽いワープロと
  は比べ物にならないほどシステムやハードディスク/ CD-ROM を酷使するので
  す。

  これからラップトップを購入しようとする場合、電池の持ちを重視するならセ
  カンドレベルキャッシュつきのものは避けましょう。これがついていると速度
  は一ないし二割上昇し、マルチメディアソフトが快適に利用できるようになり
  ます。しかしそのかわり、電池の使用量も著しく増大します。Bjoern Kriews
  氏によると、「ほぼ同一の機種で比較した場合、キャッシュなしが4時間半使
  えたのに対し、キャッシュつきのものは2時間半しか使えなかった」とのこと
  です。

  購入を検討している方には、もう一つ助言を差し上げましょう。それは「最高
  速の CPU を搭載した最新型には手を出さないように」というものです。大抵
  の場合、メーカーは特に公表することなく既発売機種の改良を実施していま
  す。古い CPU を採用した「新バージョン」の方は、同一機種の初期バージョ
  ンより発熱量や電力消費量が小さくなっているのです。確かにラップトップ用
  に改良された CPU を使用していない「自滅型ラップトップ」も出回っていま
  す。本稿執筆時点の最新世代ラップトップには Pentium-200 が搭載されてい
  ますが、電池の持ち時間は20分ほど、膝を焦がしかねないほど発熱するという
  代物です。

  さて、御分かり頂けましたでしょうか。Linux 搭載したラップトップで複雑な
  仕事をするのは断念しようと考えるに十分な制約は上記のようにいくつも存在
  するようです。(電池を節約する裁量の方法は、何もしないことです。そうす
  れば、電池が上がるまでの時間をほぼ100%延長できるでしょう)

  それでは、次に仕事の能率を犠牲にすることなく電力消費量を削減するために
  役立つもっと実用的な方策を御紹介することにしましょう。

  3.  APM (Advanced Power Management)

  携帯用のシステムの場合はもちろんのこと、卓上機でも APM (Advanced Power
  Management) がつかえる機種が多くなっています。この章ではLinux のカーネ
  ルが備えている APM 機能を使用する方法を説明します。経験豊富な Linux ユ
  ーザーは退屈で読み飛ばしてしまいたくなるかもしれません。

  3.1.  APM の効能

  APM の効能を詳述するのがこの節の目的ではありません。詳しくは Linux APM
  ドライバのページ (  を参照してください。知っておく必要があるのは「APM を
  使えば CPU が BIOS に "今はたいしたことをしていないから、BIOS 自身で電
  力節減に努めなさい"という指令を伝えられるようになるということだけで
  す。CPU のクロックを遅くする、ハードディスクの回転を止める、ディスプレ
  ーのバックライトを消す等は BIOS の仕事なのです。

  システムを一時停止(あるいは休眠)状態にしたり、ハードディスクを一時停止
  (または冬眠)状態にするのも APM の機能です。このほかかっこはいいけれど
  あまり重要とはいえない機能としては、 shutdown -h でシステムを停止させ
  ずオフにしてしまうというのがあります。

  まともな APM BIOS を装備している会社ばかりではありません。つま
  り、Linux の APM ドライバと相性が悪いラップトップも中にはあるので
  す。(うまく行かない場合には、立ち上げ時あるいは「一時停止状態」から復
  帰したときに固まってしまうことが多いようです)

  3.2.  Linux でAPM 機能を使用する方法

  簡単至極、カーネルを再構築するだけです。やり方を御存じない方は、
  Kernel-HOWTOを御覧下さい。
  設定書式の "character devices" の項には APM BIOS の部分があり、初期設
  定では以下の通りすべての機能を利用するようになっています(2.0.30 以上の
  場合)

       Advanced Power Management BIOS support: Yes
       Ignore USER SUSPEND: No
       Enable PM at boot time: Yes
       Make CPU Idle calls when idle: Yes
       Enable console blanking using APM: Yes
       Power off on shutdown: Yes

  設定書式のヘルプ文書を御読み下さい。各選択項目の詳細な説明はこのヘルプ
  文書に記載されているので、ここでは割愛させて頂きます。

  御使いのシステムが APM BIOS 基準の機能を完全には満たしていないような場
  合に特定の選択項目を利用すると、システムがクラッシュしてしまうかもしれ
  ません。新しいカーネルを使う際には APM 機能を一通り試して、うまく稼働
  するかどうかを確認してください。

  (画面の消灯に関する註記: David Bateman 氏の報告によると、現行バージョ
  ンである XFree 3.2 とは相性が悪いので「画面消灯機能」は使えないとのこ
  とです。同氏は「X を起動すると、画面が消灯してしまうという症状がでま
  す。この症状は任意のキーを押してやると解消できるのがふつうです。これは
  些細な問題ですが、いらいらの種となるのも確かです。次の XFree は様々な
  ラップトップチップセット用の DPMSをしっかりとサポートする予定で、その
  中には LCD をオフにする機能も含まれるはずです。XFree 3.2A にある xset
  のマニュアルを参照してください」と述べています。同氏はさらに「ディスプ
  レーのバックライトの寿命は、点滅の回数によって決まります。したがって、
  電池の持ち時間をとるか、バックライトの寿命をとるかという点で妥協が必要
  なのです」とも報告している)

  3.3.  APM 機能と PCMCIA ドライバ

  カーネルの再構築を済ませた後には、忘れずに Linux の PCMCIA ドライバも
  再構築するようにしてください。

  大抵の配布に同梱されている構築済みの PCMCIA ドライバでは APM が使えな
  いようになっています。したがって、BIOS はカードアダプタを「切」にする
  ことができません。

  カーネルを新しい版にした場合やもとの版が "module version
  information"「あり」で構築したものであった場合には、ドライバの再構築が
  必要です。("module version information" の選択項目はカーネル設定の
  "loadable module support" の項にあります)

  PCMCIA ドライバを構築する方法の詳細については PCMCIA-HOWTO を御読み下
  さい。あるいは Linux PCMCIA ドライバのホームページである
   をお訪ね下
  さい。

  3.4.  apmd パッケージ

  APM の組み込みを済ませたら、apmd パッケージを Linux APM ドライバの頁か
  ら取得してください。これは絶対に必要というものではありません。しかしこ
  れには有用なプログラムが集まっています。apmd デーモンは電池の挙動を記
  録し、電池が消耗すると警告を発してくれます。apm はシステムを一時停止さ
  せるためのシェルコマンドです。また、xamp は電池の現況を表示するもので
  す。

  (注:一時停止状態から復帰した際に PCMCIA カードに問題が発生するような場
  合には、別の apmd パッケージを
   から入手してください。こ
  れは一時停止状態にはいる前に PCMCIA ドライバモジュールを取り除き、復帰
  時にこれを再ロードする機能を備えています)

  3.5.  APM をサポートしていないラップトップの場合

  コンピューターの BIOS が省電力機能を全くサポートしていない場合(apm が
  ない古い BIOS でも少なくともハードディスクやディスプレーを待機状態にす
  ることは可能なはずです)にも、 hdparm -S でハードディスクの待機時間を設
  定することができます。これだけでも効果は絶大です。ハードディスクは大量
  の電力を消費するからです。hdparm は組み込み済のはずですから、hdparm の
  マニュアルを読んで命令の書き方を調べてください。

  4.  一般的なシステム設定の変更例

  ラップトップでLinux を使うようになってから、ハードディスクへのアクセス
  が数秒ごとに発生していることに気が付きました。これはシステムにだれもロ
  グインしていないときも同じでした。ハードディスクは決して省資源モードに
  入ることがなかったのです。ハードディスクの駆動を抑制すれば、電池の稼働
  時間はグンと長くなります。この章にこのためのやり方を集めたのは、その効
  果が大きいからなのです。

  試験に利用したのは RedHat 4.1です。配布によっては設定ファイルの置場所
  が異なっているかもしれません(その節には、当方まで御知らせ下さい)。

  4.1.  crond デーモンと atrun

  一分ごとに起動するプロセスがあるかどうか /etc/crontab というファイルを
  調べて下さい。atrun が見つかることが多いでしょう。

  (訳注: slackware の場合、 /var/spool/crontab/root です)

  at 命令を使えば、これから先そのうち起動される命令をスプールできます。
  Linux システムの中には、この仕事を atd  というデーモンにまかせているも
  のもあります。これに対し RedHat などの場合には、crond というデーモンが
  一分毎に atrun を起動します。

  たいていのシステムの場合、これは本当に必要なものではありません。at 命
  令が正確な時間に起動されることが死活的であるというのは稀だからです。
  /etc/crontab には以下のような一行が見つかるかもしれません。

       # Run any at jobs every minute (at を一分ごとに起動)
       * * * * * root [ -x /usr/sbin/atrun ] && /usr/sbin/atrun

  これを以下のように書き換えても何の問題もありません。

       # Run any at jobs every hour (at を一時間ごとに起動)
       00 * * * * root [ -x /usr/sbin/atrun ] && /usr/sbin/atrun

  詳しくは crontab.5 のマニュアルを御読み下さい。フォークによっては
  crond デーモンなしでも機能します。この場合には crond デーモンを完全に
  外してしまってもかまいません。

  4.2.  update / bdflush デーモン

  Linux が特定のタイミングで処理するオープンファイルバッファはかなりの数
  に達します。すなわち、システムはファイルに加えられた変更をハードディス
  クに記録されたことを極力速やかに確認しなければならないのです。さもなけ
  れば、システムがクラッシュした際には、変更内容が失われてしまうのです。

  この仕事を受け持っているのが update / bdflush デーモンです。(同一のプ
  ログラムが二つの名前を名乗っています。したがって起動する際にはこのうち
  のどちらかの名前を呼んでもかまいません)初期設定では、flush を五秒ごと
  に、 sync を三十秒ごとに呼び出しするようになっています。

  御使用中のハードディスク上のファームウェア次第ですが、著者の機械の場合
  この初期設定ではハードディスクにアクセスしっ放しになります。(ハード
  ディスクによっては、全く変更がなくてもキャッシュラムをフラッシュするよ
  うです)

  Linux がしょっちゅう「落ちる」というようなことはもうなくなっているの
  で、著者は上記の両設定値を 3600秒に変更しています。これが問題を引き起
  こした例はなく、ハードディスクへのアクセスも定期的に停止するようになり
  ました。 (もちろん今システムが落ちたら、ファイルがかなりたくさんやられ
  てしまうでしょうが)

  RedHat 4.1 の場合 /etc/inittab 中の update 呼び出しを次のように変更し
  ます。

       ud::once:/sbin/update -s 3600 -f 3600

  Suse 4.4.1 (訳注:ドイツでかなり幅をきかせているの配布の一つ)の場合
  update を呼び出ししているのは

       /sbin/init.d/boot

  Slackware の場合、 update を呼び出ししているのは /etc/rc.d/rd.S です。

  詳しくは update のマニュアルを参照してください。

  4.3.  syslogd デーモン

  syslogd デーモンは、/var/log ディレクトリにある Linux の様々なシステム
  ログファイルを司っています。システムメッセージが発せられる度にログファ
  イルを同期させるというのが初期設定となっています。

  この機能を停止させるには、/etc/syslog.conf 上に記載されているファイル
  名の前にダッシュ "-" をつけくわえます。以下の例は著者の syslog.conf で
  す。

  # Log anything (except mail) of level info or higher.
  # Don't log private authentication messages!
  *.info;mail.none;authpriv.none                  -/var/log/messages

  ここでも、クラッシュ時の問題点の報告がディスクに保存されないという二律
  背反に直面することになります。

  4.4.  init コマンド

  ブートアップ中に初期プロセスやデーモンを起動するために使用するのが
  init コマンドです。このコマンドも、各プロセスごとに sync を呼び出しし
  ます。

  この点を変更するためには、ソースコードから sync() 呼び出しを取り除
  き、init コマンドを再コンパイルする必要があります。

  ファイルバッファが失われるという問題は、 /etc/rc.d/init.d/halt という
  書式のファイルシステムをアンマウントする直前の部分に sync 呼び出しを付
  け加えるという方法で回避できます。

  4.5.  スワップ パーティション

  Linux のスワップパーティションは仮想記憶を用いて物理的メモリ空間を広げ
  るためのものです。スワップパーティションを使うというのは、ディスクアク
  セスの原因の一つとなります。御使いのラップトップがラムを十分装備してい
  る場合、あるいは軽いアプリケーション(vi のような)を使う場合には、ス
  ワップを「切」にすることを考慮したくなるでしょう。

  スワップを「切」にできるかどうかはもちろん「何をしようとするか」次第で
  す。 4M や 8M のメモリでは不十分です。どうしてもスワップパーティション
  が必要です。8 - 16 M もあれば、コンソールを使うアプリケーションなら難
  なく利用できます。マルチタスク機能を諦めるなら、スワップを「切」にして
  も危険はないでしょう。X-Windows 環境を使うには潤沢なメモリが必要で
  す。16M 以上のメモリがない限りスワップは必須です。

  (註記:著者のラップトップは16Mですが、スワップを用いないで emacs 一つ、
  bash シェルを四つ走らせながらカーネルの構築をしてもメモリ不足を来たす
  ことはありません。著者にとってはこれで十分です)

  既にスワップパーティションを設定してしまっている場合でも、これを使わな
  いようにすることはできます。/etc/rc.d/rc.sysinit にある swapon を呼び
  出す部分の先頭に "#" を付け足せばいいのです。スワップを常時オフにはし
  てしまいたくない時には、システム立ち上げ時にスワップ使用の可否を問い合
  わせるようにしておきましょう。RedHat 4.1 の場合には
  /etc/rc.d/rc.sysinit、Suse 4.4.1 の場合には /sbin/init.d/boot を以下の
  ように記述します。 (Slackware の場合には、 /etc/rc.d/rc.S です)

  echo "Should the system use swap?"
  echo "  0: No."
  echo "  1: Yes."
  /bin/echo "Your choice: \c"
  read SWAPCHOICE

  case "$SWAPCHOICE" in
      0)
          # Do nothing.
          echo "(Swap partitions disabled)"
          ;;
      *)
          # Start up swapping.
          echo "Activating swap partitions"
          swapon -a
  esac

  こうしておけば、交流電源を使用しているときにはスワップを用い、電池を使
  用しているときにはスワップを用いないといったことが可能となります。

  4.6.  apace httpd webserver デーモン

  著者は Website 用の cgi 書式の作成・試験にラップトップを使用していま
  す。ローカルの Web サーバーをラップトップ上で立ち上げているのはそのた
  めなのです。書式を試験したり頁を時々検査したりするだけの人にとって標準
  設定はいささか過ぎたるものでしょう。

  httpd.conf にある MinSpareServers、 StartServers の値を 1 に変更してく
  ださい。ローカルの試験サイトにはこれで十分でしょう。

  Web サーバーのログを取るのをやめたい際には、httpd デーモンを再コンパイ
  ルするしか手がありません。詳しくは当該文書を御読み下さい。

  4.7.  更なる最適化を目指して

  Linux システムがまだハードディスクを頻繁に触りに行きすぎるように思える
  時には、ps ax コマンドを使って一体何が起こっているのかを調べるという手
  があります。この命令は現在走っている全てのプロセスをフルネームで表示し
  てくれます。場合によっては、各プロセスのコマンドライン引数も表示されま
  す。

  (訳注:表示が画面の右端で切れてしまうときには、 ps axwww とします)

  次に各プロセスのマニュアルを読んで、その正体は何か?、挙動を変更するに
  はどうすればいいのかを調べてください。この手法を使えば、どのプロセスが
  ハードディスクへのアクセスを頻繁化させている主犯かを突き止めることがで
  きるはずです。

  新発見がありましたら、是非著者までE-mail を御送り下さい。

  5.  付録

  5.1.  Linux 配布企業の方への御願い

  Linux の配布を行っている業者の方がこの文書を読み通してくださったとした
  ら、これは幸いなことです。

  ラップトップが日に日に普及してきているにも関わらず、Linux の配布を行っ
  ている企業の中には未だに携帯用コンピューターへの対策が十分ではない所が
  多いようです。御社の配布に手を加えて、この文書を無用のものにしてしまっ
  てください。

  ラップトップ環境を最適化した初期設定をインストール機能に組み込むこと。
  「最小限のインストール」のダイエットは不十分なことが多い。ラップトップ
  ユーザーが外で利用するには不必要なものがまだたくさん含まれています。若
  干の例を挙げるとすれば、三種類もの vi は必要ありません(Suse Linux)。携
  帯システムの場合には、印刷機能も必要ないのが通例です。(印刷機などとは
  金輪際接続しないはずです。印刷をするのは家のデスクトップでというのがふ
  つうでしょう) 。また、ネットワーク機能も全く不要だというラップトップも
  あります。

  消費電力管理の改善、PCMCIA サポートの円滑化。ユーザーが必要に応じてイ
  ンストールできるような APM BIOS 対応の構築済みカーネルおよび代
  替PCMCIA用ドライバの配布。コンパイル済み APMD パッケージの配布。

  ネットワーク設定を動的に変更する機能の付加: ラップトップで Linux を利
  用している人の多くは、ネットワーク設定の異なる場所間の移動を繰り返して
  います(家庭ネットワーク、職場あるいは大学のネットワークなど)。つまり、
  ネットワーク ID を頻繁に変更しなければならないことが多いのです。大抵の
  配布の場合、Linux システムのネットワーク ID を変更するのはやっかいな仕
  事となっています。

  御社の配布にラップトップ用の最適化を行われた際には、どのような機能を付
  け加えられたかを著者にまで御一報下さい。将来の本HOWTO には御社配布の
  ラップトップ向け機能を紹介する項を設けさせて頂きます。

  5.2.  謝辞

  電池技術に関する情報の大部分は C't Magazine fuer Computertechinik誌 (
  Heise Verlag Hannover, Germany 刊行)10/96号、204ページ以下に Michael
  Reiter氏が寄稿した「電力節約」という記事をもとにしたものです。同誌の許
  可は取得済みです。この出版社のweb サイト  を訪ね
  てみてください。

  この文書を著述するにあたっては以下の方に御世話になりました。

       Frithjof Anders 
       David Bateman 
       Markus Gutschke 
       Kenneth E. Harker 
       R. Manmatha 
       Bjoern Kriews 
       James Youngman 

  5.3.  本文書について

  最新版が HOWTO の通常配布場所である
  http://sunsite.unc.edu/mdw/linux.html やあまたのミラーサイトにあるかも
  しれません。また、著者のホームページ 
  をも御覧下さい。

  この文書はドイツ鉄道を使ってハンブルグとハノーファーを往復する時間を利
  用して作成したものです。(新型の超特急ICE-2 の車両にはラップトップ用の
  電力供給口が設けられています。万歳)

  というわけで、私は機嫌良くまた移動中です。

  (訳注:直流電力の供給があるのは一等車だけのような気がする...。このかた
  の車両はまだあまり普及していないので、ドイツ出張の方はあまり期待なさら
  ない方がいいかも)

  日本語版作成: 佐藤亮一 (rsato@ipf.de)

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